■ 特許出願費用が無駄な経費になってませんか? | ||||
1.はじめに どこにでも必ず無駄はあります。しかし、特許に関しては、なんとなく全て無駄な経費に感じられる、という方も多いのではないでしょうか。特許を取得したけど、実施しようとしたら他人の特許に引っかかることが判明した、という冗談にならない話もあります。 特許を取ったから安心して実施できる、という誤った理解は、特許権は独占排他権である、と教科書に書かれているからではないでしょうか。特許権は、単なる排他権にすぎません。では、この排他権で、企業は、特許費用以上の利益をどのようにして得るとよいのでしょうか? 2.ケース1:特許を取得したが権利範囲が狭かったため、他社が特許を容易に回避して市場に参入し、当社の売り上げが減少した。 これは典型的な特許費用の無駄遣いに該当します。そのため、多くの方がこのような問題を避けるために注意を払っていると思います。このような無駄遣いを防ぐために、特許事務所のセンスがもっとも問われます。特許事務所との打ち合わせでは、発明の構成要素を順番に省略してみたり、他の構成要素に置き換えてみたりすることにより、広い権利の取得が検討されます。また、このような検討により、発明が上位概念化され、より好ましい開発方針や新たな開発方針が見出されることがよくあります。 3.ケース2:製品開発および特許取得も一段落し、他社が市場参入する前に改良しようとしたら他社の特許に引っかかることが判明し、しぶしぶクロスライセンスを結び、他社の市場参入を許してしまった。 これは、事業収益から特許費用を差し引いた額を最大にすることができなかった無駄使いになります。特許事務所との打ち合わせでは、発明者から発明の実施の妨げになる課題の説明を受けたり、議論の中で課題に気づいたりすることがあります。その場合、特許事務所は、他社がその課題の解決手段を権利化しないように、国内優先権主張出願(1年以内の出願し直し)や別出願を発明者に促します。逆に、依頼者が後発メーカーの場合、特許事務所は、市場参入のためにコア発明の外堀を埋める出願のアドバイスを行います。 4.ケース3:十分に広い権利の特許を取得したにも関わらず、他社が別の手法で市場に参入してきたため、当社の売り上げが減少した。 これは、特許権が排他権でしかないことを念頭に置かなかったために生じる特許費用の無駄遣いです。このケースを防止するには、他社の開発動向を知る必要がありますが、通常は困難です。もちろん、特許事務所の努力のみでなんとかなるものでもありません。特許出願の打ち合わせでは、特許事務所は、このようなケースを避けるために、候補となる他の手法を発明者からお聞きし、必要な他の出願をアドバイスします。特許出願の数はある程度必要となります。 5.外国出願について 外国で特許を取得するには、多額の費用が必要になります。1カ国につき、100〜300万円が想定されます。世界中で商品を販売する場合、世界中で特許を取得する必要があるのでしょうか?例えば、現在または将来、1000万円ほどしか売り上げが見込めない市場に対して、他社を訴える価値はあるのでしょうか?また、そのような市場で他社は訴えてくるでしょうか? このように考えると、特許を取得すべき国は多くて数カ国に限定されてくるはずです。ここで、特許は排他権ですので、競合他社の動向を意識する必要があります。実際には、他社の売り上げが大きい市場は、貴社と異なる可能性があります。他社の売り上げの大部分が1カ国のみの場合、その国に集中的に特許出願をすることにより、自社の売り上げの大きい市場で訴えられた際に、他社が市場占有している国で訴えを起こすという手法も考えられます。これにより、自社が実施しない特許の取得に要する費用を削減することができます。 6.まとめ 特許は排他権にすぎないため、その活用には他社の動向に対する多くの情報が必要となります。また、単に発明を出願しているだけでは、市場占有に貢献せず、多額の費用が無駄になってしまいます。一方で、特許出願の多くは、特許事務所に依頼されていると思いますので、特許事務所になるべく多くの情報を提供し、企業戦略を反映した特許出願とする必要があります。 もし、貴社が、単に特許出願の数で特許活動を評価しているのであれば、それは無駄遣いになっている可能性があります。少なくとも主力製品に関して、市場拡大または維持のために特許事務所と協力して特許がどのように取得され、役立っているのかを評価することにより、さらに優れた次の特許戦略が導かれます。 |
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